東京アカイイト[2006.11.6]『東京アカイイト』 脚本・演出 :青田ひでき 出演:青田ひでき、海野かかし、佐古井隆之、甘城美典、山崎真宏、足達洋介(劇団BLUESTAXI) 御舘田朋佳(スーパーエキセントリックシアター、劇団BLUESTAXI) 立辺孝(だるま企画、劇団BLUESTAXI) あんず(透現演舞) 大窪尚記(フリー) 森幸子(東京優勝、だるま企画) 春口あい(フラッグスファイブプロモーション) 山田太一(太田プロダクション) 会場:中野 ザ・ポケット 2006年12月6日(水)~10日(日) 出演13人かぁ...舞台パンフレットを見て不安になりました。 だって。 最近、観た舞台って3人しか出演しないものだったから(苦笑) 顔と名前の区別つくかなぁ~と思っていたのは束の間でした。 こんなに個性有触れる面々を目の当たりにしていたら...ソレどころじゃなくなりましたから。 と副題(?)のとおりクリスマスの日、一日に色々な事があらゆるシチュエーションで繰り広げられていました。 1.コンビニの店頭でクリスマスケーキを販売する男女 2.泥酔した女性と、彼女の話を延々と聞かされる気弱な男性 3.離婚する事になった夫婦 4.妻となった女性を亡くした男性とその娘 5.あと僅かな命で意識が無い母親と数年ぶりに会いに来た娘 6.居酒屋デートを楽しみに待つ男性とその後輩(男性) 7.サンタクロースの衣装で、エッチな店の看板を下げたサンドイッチマン これら全てがクロスするわけではないけれど、同じ日にどこかで起こった12月25日の出来事。 楽しい楽しいクリスマス~という日に、喧嘩、裏切り、誤解、涙する人達もいる。 勿論、笑って楽しい時間を過ごすことも... そして。 誰もが一人きりではいたくない!という思いを秘めている。 クリスマスだから...というわけではなく、日々の生活で実は感じている、求めている。 心の奥深くでは分かっていて、気がついているはずなのに、つい避けてしまう本音に正面から向かう勇気と大切さ... 色々な事を改めて気がつかせてくれるような、観終えた後、心がポカポカするような舞台でした。 ※以下、物語の種類を番号で区別してしまいます。手抜きとなりますがご容赦ください 1男女が、いかにも寒い~という表情で道行く人に「ケーキいかがですかぁ~」と声を掛けていたら、2女性、3女性、4男性(山田太一さん)、5女性...が、前を通ったりケーキを買ったり。 そんなシーンから”東京アカイイト”は始まりました。 勢い良く登場した山田さんは...頭からなだれ込むかのように見事な転びを披露!? 演出・演技とは言え...あれは絶対、痛いよぉ~(ご本人とお話した時、思わず「大丈夫ですか?」と聞いてしまいました) それぞれのストーリー... 2の二人は...会社の同僚同士 泥酔した女性はコンビニ店頭でケーキを買って、会社の同僚の家に行く。 突然の訪問に嘆きつつも、何度も同じような事があったようでテキパキする男性。 ヒョロッとしていて、傍から見ても少々頼りな下げな面持ち。 女性は最近デートするようになった人とクリスマスデートをした...と喜びの報告かと思いきや、何かチョット変。 同僚男性が「イブが日曜で昼間から会えるのに、仕事の後にしか時間が取れないクリスマスだけ会うと言うことは...」と話すと、元気だった女性はシュンとなり、他に女性がいると感じているとポツリ。 だって。クリスマスデートに和民で食べ&飲み放題ですから! あ、別にコレでも楽しく過ごす事もアリだけど、クリスマスにはチョットねぇ... 恒例のようで女性が「泣いてもいいですか?」「今日(歌う曲)は何にしましょう?」「プリプリのMで!」となって、テーブルで弾き語りする彼女が♪いつも一緒にいたかったぁ~♪と涙ながらに歌う。 せ、切ない...(と感じつつ、学生時代にこの歌で涙した事を思い出しちゃった。テヘッ) いつの間にかソファーで寝てしまった女性に上着をそっと掛けてあげる同僚。 会えば大騒ぎされ、発言を阻止され、相手するのが大変だけど、実はその女性のことが好き...とポツリ呟く同僚。 ふと動く女性が起きたのかと勘違いして慌てながらも、心に秘めた想いを呟く。 そして...寝ていた女性がムクリと起き上がり、挙動不審な面持ちで急に帰ると言う。 きっと寝たふりして聞いていたんだね。 突然の告白に動揺しつつも驚きつつも嬉しかったようで...一度家を出てから戻ってきて「ありがと」と笑みをこぼす。 「え!何が?」と、その”ありがと”の意味が分からず慌てる同僚。 3の二人は...高校の同窓会で再会した後に結婚したカップル(夫婦) コンビニ店頭でケーキを販売している男性に声を掛けたのはケーキを買う意思ではなく「ダンボールありますか?」。 クリスマスの日に引越し(荷造り)する事になった女性は、5年共に暮らした生活にピリオドを打とうとしていた。 再会した当時、不倫をしていた彼女を振り向かせて結婚した旦那が、何故だか結婚して数年経っても、妻がまだ不倫相手を想っているのではないかと思い込んでいた。 そう思う自分が嫌になり...自分が不倫する事で、妻が別れを切り出すようにしていた。 「あれだけ”死ぬほど好きな人がいる”と言っていたのに、結婚して変るとは思えない!」と旦那。 「好きになるのに時間は必要なの?私のことを好きと言ってくれたあなたを好きになったのに!」と妻。 お互い、自分の本心を表に出す事無く続いていた結婚生活。 怒鳴りながら本音を言い合う内に、実はお互いを本当に好きである事が分かる。 でも。 やりなおそう...という言葉は無く「一人づつ考えましょう」という妻の決断。 4の二人は...同じ愛する人を失った”いちよう”家族の二人 お父さんは娘と一緒に住みたい事を告げるが「ありえない!」と断固拒否する娘。 娘は「前に進まないと駄目になる」と言い、お父さんは「過去を引きずって何が悪い!今でも(妻の名前)を愛しているんだ!」と言う。 プレゼントとして持ってきた、雪だるまのマフラーを初めは受け取らなかった娘だったけれど、少しづつ歩み寄る気持ちが芽生えたようで、受け取りに戻ってくる。 それぞれが店員が驚くほどの勢いで怒鳴って泣いて...お互いの想いを認識する。 シリアスに切なく愛する人を失った事を話つつも、太一さんの面白い言動・行動が散りばめられていました。 5の二人は...ステージ上では娘役の方の一人芝居。(時々、Dr.が来たけど) 色々なチューブを身体に装着されて命を繋いでいる意識不明の母親がそこに横たわっているのが見えるようでした。 次々と男を変えた母を憎む娘は「あんた」と呼んでいたのだが、一番似たくなかったその部分が似ている事に気がついた彼女は、男遍歴(!)を母に向かって語りだす。 辛く苦しい事も話しているうちに楽しくなってテンションがあがってきた娘。 そして、Dr.から”あげは”と”ごめんね”という言葉に聞き覚えが無いか尋ねられる。 いつしかうわ言のように呟いていたそうだ。 心当たりが無いと言っていたが...幼少期の忘れていた記憶が蘇り...本当は母親が大好きだったことを思い出す。 病院に来た時は「どうせ死んじゃうんだから」と気に留めていなかった「母さん死んじゃやだ!」とお泣きする。 最後の男...喫茶店で柄にもなく声を掛けてきた小説家を懐かしく思い出す。 自分で着替えるのもままならないような、手が掛かるどうしようもない男だったけれど、一緒に居ると楽しかったっけ、話を聞いてくれていたっけ...と。 そしてコンビニ店頭で売られていたケーキの最後の一個を買い、その別れた男性に電話したのだが。 その男性は7だったのです! 6の二人は...サラリーマンの先輩と後輩 彼女(?)を25日に飲みに誘ってOKしたという事はフリーの証拠!と喜ぶ先輩だったが、待てど暮らせどやって来ない。 電話が入ったものの...何十人に一人の難病だとかでデートキャンセル! 男二人で飲もうとなったものの、悶々としてしまった(!)先輩が後輩に「お前は巨乳が好きだろぉ~」と、そんな店(あえて書きません!)に行こうと誘う。 そして街中で見つけた”そんな店”の看板を掲げたサンドイッチマンに声を掛ける。 「お客様ですか?」と案内するかと思いきや「誠実そうなあなたを連れて行けません」と断るサンドイッチマン。 20歳だとかグラマラスな女性がいるとか明朗会計とかが一切嘘と告白する。 20歳 →20代の子がいるわけではなく”その道20年の女性”がいるという意味 グラマラス →胸が大きいわけではなく”太っている”という意味 明朗会計 →思いっきりボッタクル! 男性二人はガッカリして飲みに戻る。 サンドイッチマンも、自分にこんな仕事は合わないと悟って店に電話して辞める。 そしたら、5女性から電話が鳴り... ”見かけは悪くても心が優しい男”が、このサンドイッチマンだとは! でも、ちょっと納得しちゃいました(苦笑) 各ストーリーはこのように、二人づつ、そしてチョイと喫茶店のマスターとかDr.が加わり展開していました。 1つのストーリーを終えたら次が始まって...という事ではなく、あるところまで進んだら、ステージが暗転して別のストーリが始まる。 時によっては、ステージ左半分のセットで”ある二人の物語”が進行していながら、少し照明が落ちている右半分のセットに”ある二人の物語”に登場する二人が止まっていたり... 太一さんを初め、ステージの随所に笑えるポイントが散りばめられていてワクワクしました。 2女性なんて(SET)にも所属している方だからか、笑えるシーンには容赦が無い! 酔っ払ってフラフラと歩く事1つにしろ最高! 観客のオジサンも爆笑しまくっていてね。 (一人で来られていた男性を数人見かけました) 演じたキャラでもあるけれど、女らしく見られない事を諦めつつも本心は...という複雑な心理を分かりやすく演じられていました。 あ、1女性もね。 寒い中、なかなか売れないケーキを共に完売した喜びを分かち合い、「可愛いよ」と言ってくれた男性に「もう一度言って」とお願いしちゃう顔とか。 始終ムズーッとしていたのが嘘のように”女の子”になっていたっけ。 ”アカイイト”が繋がっている相手は、自分が気がつかないうちに傍にいるかもしれない。 クリスマスだからって意地になって男女で過ごさなくても...気心しれた人と楽しく一緒にいられる事が本当の幸せなんだ。 クリスマス、誕生日etc.とイベント要素のある日に限らず、いつも一緒にいられる事を、当たり前と思ってはいけないんだね。 ...という事が胸に刻まれるかのような舞台でした。 ※12/6のブログはコチラ ~ end ~ |